2002/10/12
ニュートリノでノーベル賞の話2
続きです。
このスーパーカミオカンデの何が凄いかって言うと、もちろん世界最大という理由ではありません。この装置は超新星爆発時のニュートリノを世界で初めて検出した装置であり、またニュートリノ振動の重要証拠を提示した装置という点が非常に大きいのです。ここでスーパーカミオカンデからは少し離れてニュートリノについて説明しましょう。そもそもニュートリノというのは素粒子の一種で、重さがあるのかないのかすら判らなかったという、現代物理学でも謎の物質です。いわゆるビッグバン宇宙論において初期段階で大量に生成された物質と考えられており、また、放射線が大気に接触した際にも、核反応を起こしてニュートリノが生成されます。また、擬似的にニュートリノを発生させることもできますが、検出するのは困難(ニュートリノがあまりに小さく、あらゆる物質をすりぬけてしまうため。原子の隙間すらニュートリノにとってはスカスカと言ってよいのだ)です。検出方法は純水の分子に偶然当たったニュートリノの出すチェレンコフ光しかないのです。さて、このニュートリノに重さがあるか無いかというのは極めて重要なことです。というのも現在の素粒子論はニュートリノの重さを0と仮定しており、これに質量があるとなると素粒子論が根底から覆されてしまい、また、宇宙論も大きく様変わりするからなのです。スーパーカミオカンデは世界で初めてニュートリノ振動(ちょっと説明が難しいが、誤解を恐れずに言うならニュートリノが別タイプのニュートリノに変化する現象。ニュートリノに質量が存在しないと発生し得ないため、ニュートリノの質量存在を証明する)に対する重要な証拠を発見することに成功しました。これが本当に正しければ(注:他機関による追従実験で同様の結果が出ないかぎり確定とは言えないため、断定できない)素粒子論は「標準理論」を改めなければならず、またニュートリノに質量があるとすると、宇宙論に対する影響は大きいです。
続きます。


 

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