2002/10/13
ニュートリノでノーベル賞の話3
続きます。
まず、現在の宇宙論の大きな矛盾、ダークマター問題も解決する可能性があります。ダークマター(dark matter)という言葉は、宇宙論に興味のある人しか聞いたことがないと思います。直訳するなら暗黒物質なのですが、正体は不明です。これが重要な理由は、現在の観測で発見できる宇宙の総質量が余りに軽すぎるからです。星はその明るさから質量が求まります。そこで銀河系星団の全ての星の質量を加算してみると、その総量が少なすぎ、銀河の運動が説明できません。これを説明するには、光や電波では検出できない謎の物質が宇宙に満ちていないといけないことになるのです。そして、現在の宇宙の質量をその運動から計算すると、宇宙の質量の95%ほどが、謎の物質のもつ質量で賄われているという結論に達してしまうのです。これだけ宇宙論が進んでも、質量比で95%が不明なのです。そこでニュートリノの登場です。ニュートリノが質量を持っているとすれば、これはダークマターの有力候補になりえます。ニュートリノは光や電波では観測できません。ですから宇宙がニュートリノに満ちており、そのニュートリノが検出できないために重さを軽く見積もったと考えれば、銀河の運動を多少は説明できるのです(しかし、それでもニュートリノの重さ程度では95%の質量に足りない。このへんに関しては仮想素粒子のモノポールとかスーパーシンメトリーとかが候補に上がっているのだが、ちょっと難しい話になるしニュートリノと直接は関係無いので省く)。ニュートリノに質量があるとなると膨張宇宙モデルも危うくなるかも知れません。宇宙全体の質量が大きすぎる場合、その重力によって膨張宇宙は収縮を始めます。現在の宇宙モデルでの質量は膨張宇宙が収縮することはないとされていますが、ニュートリノに質量があるとすると、宇宙の重さは現在想定している重さよりもさらに重くなり、場合によっては収縮宇宙に転嫁する可能性もあるのです。
素粒子論や宇宙論を根底から覆す大発見かも知れない。それが今回のノーベル賞なのです。
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