2002/10/11
ニュートリノでノーベル賞の話1
今回、ノーベル賞に3年連続で日本人が選ばれました。今回のノーベル物理学賞はニュートリノに関する研究に与えられたのですが、これは物理学を少しかじっただけの私から見ても非常に順当な受賞だったと思います。
最近ちょっと甚大な事故(しかも人災!)を起こしてしまいましたが、今回のノーベル賞には日本が世界に誇るニュートリノ検出器スーパーカミオカンデ(Super KAMIOKA Nucleon Decay ExperimentまたはSuper KAMIOKA Neutrino Detection Experimentの略。KAMIOKAは地名)によるニュートリノの検出が大きな意味を持っています。これによって「ニュートリノに質量があるかないか」という素粒子論の長年の論争に、実測データによる重大な証拠を提出したのですから。今回はまず、スーパーカミオカンデについて説明しましょう。スーパーカミオカンデは単純に言うと地底深く(1000メートル)に作られた、50000トンの純水の入った、高さ、直径ともに約40mの巨大な円筒形のタンクです。その中には光電子増倍管というのが入っており、これがチェレンコフ光を検出します。チェレンコフ光というのは、主にニュートリノ検出に使われる、青白い光です。基本的にニュートリノはあらゆる物質と反応しないのですが、極めて稀な確率で、巨大なエネルギーを持つニュートリノがたまたま電子や陽子に衝突した際エネルギーの低い電子や陽子が弾き飛ばされるということが起こります。このときの電子や陽子はニュートリノよりもエネルギーが低いため、ニュートリノよりも速い速度、つまり「水中の光の速度を越える」ために発生します(注:光の速度より早いと聞いて、相対性理論が破れた、とか言い出さないように。あくまで「水中を進む光の速度」を越えるだけ。水中では光は屈折率分、速度が落ちるように見える)。なぜこんなでかい円筒が必要かというと、外部からの要因(主に放射線)を防ぎ、純粋にニュートリノだけの検出をするためです。
続きます。


 

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