2002/06/26
あみだくじの話2
続きです。
問題は、まだあります。パスカル三角形を用いるには、端が存在しない状態でなければなりません。つまり、左右分岐の確率は無限に等しくなければならないのですが、あみだくじは輪っかではありません。端というものが存在します。3列のあみだくじで考えてみましょう。真中の列は確かに左右に行く確率は等しいですが、左の列は必ず右に行きます(左に列が無いため行きようがない)。同様に、右の列は必ず左に行きます。この時点で二項定理の前提条件が崩れていますから、パスカル三角形であみだくじを解こうとするのがナンセンスであることが判ります。前提条件の異なるあみだくじという事象に対して、まったく無意味な二項定理を用いて、真下に行く可能性が一番高いというのは、単純な数学的な騙しのテクニックに他なりません。3列のあみだくじで下の真中が当たりかつ、横線の引かれない列が存在しない場合、当たる確率と本数の関係は、細かい計算は省きますが、線2本の場合は左右のどちらかが当たり、真中は当たらず、それ以上の場合は常に、線が奇数の場合は、どの列も等確率になり、偶数の場合は、左右が同確率で真中がやや不利(数式で表すと、((2の本数乗−2)/3)を切り上げたのが左右、切り捨てたのが真中。例えば線4本だと5:4:5、線6本だと21:20:21)となります。5列の場合は線が4本の場合、8通りで3:1:0:1:3となり、真中は当たらず、線が5本のときは60通りあるのですが、14:12:8:12:14となっています。結局、この後、プログラムを用いて列と線の数を変えて色々と試してみたのですが、どのパターンでも、一番下の真中に一番上の真中が来る確率は、他の場所に比べて、よくて等確率、大抵の場合は、むしろ低いという結果が出ました。
一見、本当のような理屈を見かけたら、それが本当に本当なのか、自分で検証する必要があります。そのような態度を懐疑主義と言います。このような態度こそが、「論理的な思考や戦略的な思考を育む、第一歩なのです」。


 

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