2001/10/13
紅茶の名称の話1
日本で飲む紅茶の種類は、普通の紅茶以外ですとレモンティとミルクティ、ロイヤルミルクティ、それにロシアンティといったところでしょうか。ところが、この中でイギリスでも通用するのはミルクティだけです。
まずレモンティですが、人によってはイギリスにはレモンティと呼ばれるものは存在しないと言いますが実は存在しています。ロシアンティです。イギリスではレモンを入れた紅茶をロシアンティと呼んでいるのです。これには逸話があり、ヴィクトリア女王の孫娘のダッキー(ヴィクトリア・メリタのこと)がロシア大公のキリルと再婚してロシアに住んでいたのですが、女王はこの孫娘に会いたくてわざわざロシアまで出かけます。遠路はるばるロシアまで来た女王をもてなすためにダッキーは茶会を開くのですが、なにせロシア。良い紅茶が手に入るわけもなく、せめて香り付けに、とレモンを浮かべた紅茶を出したのです。孫娘の心遣いに感激した女王はイギリスに帰ってからも折に触れてこの話をし、それゆえイギリスではレモンティがロシアンティと呼ばれるようになりました。では我々がロシアンティと呼んでいるものはイギリスでは一体なんなんでしょうか。たしかにロシアではかつて紅茶にはちみつを入れる風習がありましたが今は普通に飲んでいますし、ジャムが添えられるなんてこともありません。そういうわけでジャム入り紅茶というのは日本だけの風習のようです。この日本だけのロシアンティは脇に置いておいて昔はロシアでやられていたはちみつ入り紅茶(本当のロシアでのティ)ですが、イギリスには存在しません。実際にやってみればわかりますが、紅茶にはちみつを入れると紅茶の水色が黒ずみ、悪くなりますし、香りも悪くなります。これは紅茶に含まれるタンニンがはちみつに含まれる鉄分と結合してタンニン鉄という物質に変わるためです。せっかくの紅茶に最も相性の悪いはちみつを入れるなんて酷いことをしたら、イギリス人は怒ると思います。
#2002/06/28補記:はい、ご指摘のとおり、アリックスの間違いです。ダッキーの結婚は女王死後ですものね。会えるわけがないです。#
明日に続きます。


 

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1894年初夏、孫娘・アリックス(22)とニコライU世、婚約の報告、    ウィンザー城。