2002/10/09
歩き煙草禁止条例の話1
千代田区で10月1日から施行された「歩き煙草禁止条例」、正式名称を「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」というのですが、日本で初めて歩き煙草を禁止する条例として注目を集めています。この条例に対して拍手喝采という人も居るでしょうが、安心するのはまだまだ早いですよ。実はこの条例、かなりの骨抜き条例なのです。
何を言うか、ちゃんと罰金まで科すような条例じゃないか、という人もいるかも知れません。しかし、この法律、まず取り締まるのは区役所の職員ですし、基本的には注意のみ、次いで厳重注意、さらに悪質な場合は罰金2000円です。たった2000円ですよ、2000円。それでも無いよりはましと思うかも知れませんが、この2000円も実は「任意」です。つまり、たとえ払わなくとも何らペナルティを科されないという代物なのです。実質的な効力を疑問視するのは当たり前です。地方自治体などが科料付きの条例を制定するというのは、よくある話です。例えば「空き缶ポイ捨て禁止条例」や「煙草ポイ捨て禁止条例」なんかがそうです。この科料は「任意」ではなく強制力を持っています。では何故この条例だけ中途半端で実行力に乏しい骨抜き条例になってしまったのでしょう。これは別に政治的な問題ではなく(だと面白かったんだが)、単純に法律の問題です。地方自治体が勝手に条例を作って処罰するような真似をしたらどういうことになるでしょう。ある場所では刑法よりも重い処罰が為されるなんてことが許されるでしょうか。もちろん許されません。そのため地方自治体などが科料や刑罰付きの条例を制定する場合、そこに法的根拠が存在し、かつその金額や刑罰が刑法などの「国の定めた法律」を越えない範囲でしか制定できないという縛りが用意されています。これは当然の処遇なのですが、「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」による科料もこのルールが適用されます。なぜならこの条例には、なんら法的根拠が存在しないからです。
続きます。
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