2002/09/13
CMMの話1
知らない人も多いと思いますが、ソフトウェアプロセスの判断にCMM(Capability Maturity Model)というのがあります。
1年くらい前から日本でもCMMを取り入れようという動きがありますが、果たしてうまくいくかどうかという点では、私には大いに疑問があります。というのも、日本とアメリカではIT業界もそこで働く人の意識も、まったく異なるからです。特に日本において特異的なのは受託開発と呼ばれるIT業種に従事する人が圧倒的に多いことです。アメリカにおける開発プロセスは、もちろん受託開発もありますが、むしろパッケージビジネスのほうが主流になりつつあります。そして、CMMはパッケージビジネスにおいて威力を発揮するように設計されているように見えます。業種が異なるにも関わらずプロセスだけを取り入れようとすれば、効果に疑問が残るのは当たり前です。もちろん、受託開発業務にCMMを使えないことはないのですが、そのためにはアメリカ的(というか世界的。特殊なのは日本)な社員雇用形態が必要となります。それは、契約と権限という言葉で表されます。いわゆるアメリカにおける雇用というのは、ある人に対して、ある権限を限定し、その権限内でのみ仕事を行う、という契約を結ぶことで成り立ちます。そのため、その権限を越えた行動は一切行いませんし、行わせません。たとえ隣で困っている人が居ても、それを助けることは越権行為として禁じられています。例えば、開発フェーズを担当する人が設計区に遅れが出たからといって設計の手伝いをするということはありません。設計が遅れたなら、ただ待つだけです。逆に言えば、権限が決まっていますから、ある人が居なくなることで困るということはありません。人が突然辞めたとしても同じ権限範囲で働いてくれる別の人がいれば、その人を雇うだけで済みます。つまり、人間をパーツ化して取り替え可能にしているのが、アメリカ式雇用形態です。一方、日本の雇用形態はどうでしょうか。
続きます。


 

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