2002/04/16
光速を越える話2
続きです。
論文をよく読んでみると、特殊条件下で光のパルスの伝達速度が光速度よりも速かったという話のようです。つまり、光子を光速度よりも加速させたのではなく、光の波動性を利用して、パルスパターンの一部を光よりも速く伝達させたということでした。これは粒子を真空中の光速度よりも速めたわけではありませんので、相対性理論の情報伝達速度が光速を越えないという原則を覆したわけではありませんし、送った信号は山形の信号であり、光速を越えたとされたのはその一部だけ、かつ山形の信号を送ったために発生した現象なので、情報伝達速度が光速を越えて伝わったわけでもありません。つまり、この実験は真空中の光の速さを超えた「ように見える」光を作り出しただけ、ということです。インフレーション理論で有名な佐藤勝彦教授は、「光源を並べておき、前もって決められた時間に次々と点灯させることで、見かけ上、光速を超えるようにすら見せることもできる」という、面白い例えを出しています。この、相対性理論の範疇にあるということ自体はNEC自身も認めているようです。
その論文は直接読んでいただくとして、この中でちょっと気になった表現がありました。「一般的な相対性理論の見方は、「光より早いものはない」というもの」という表現ですが、相対性理論は「光より早いものはない」なんて言ってないですし、特に一般相対性理論においては、これは誤りです。何か誤訳したのだろうかと思って、英文のほうを読んでみたところ、「光より早いものはない」というmisconceptionがwrongであると述べています。つまり「光より早いものはないという誤った認識」が、やっぱり誤っていたんだよ、ということですね。なるほど、ここで言う「一般」とは「一般人」を表し、「科学的に間違っている、相対性理論に対する「光より早いものはないという一般人の誤解」は間違っている」と、当たり前なことを述べたわけですか。こんな判りにくい表現で。・・・日本語訳のほうに、相対性理論の範疇であることを「しぶしぶ」認めたと感じるのは私だけでしょうか?
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