2001/10/29
海綿状脳症の歴史の話3
続きです。
実はこのスクレイピー羊から狂牛病感染説には異説もあり、1970年代に突然変異的に発病したたった一頭の羊(または牛)が原因となって広まったという説です(なお、現在に至ってもどちらが正しいのかはよくわかっていない)。異説はあるとしても少なくとも羊から牛に感染したことは事実であり、さらに、その証拠は増えつづけました。イギリスでは1988年に反芻動物の肉骨粉を家畜の餌にすることを禁止し、さらに1989年には牛の内臓のうちの一部を食材として使用することを禁止しています。その結果、数年で狂牛病の発生率が激減したのです(イギリスでの狂牛病の発生率は1992年をピークに減少した)。このことはある恐ろしい可能性を証明していました。つまり羊の肉骨粉を食って狂牛病となった牛を食った人間もまた感染する可能性があるということを。1990年にこのことが報道されるや否やイギリスはパニック状態になりました。事態を重く見た英国政府は狂牛病は人間に感染しないという異例の発表を行い、新聞に農業大臣が自分の娘とハンバーガーを食べている写真まで掲載して否定しました。しかしすでに1989年に牛の内臓の一部を食材として使用することを禁止していたことは述べたとおりです。1994年になって、イギリスで異常なほど若い世代にクロイツフェルトヤコブ病が発病し、これがいわゆるクロイツフェルトヤコブ病よりもクールー病に似ていることがわかりました。これを非定型クロイツフェルトヤコブ病と言います。この病気が1995年末ごろから大量に発見される(たった10ヶ月で10人)にいたって、イギリス政府はついに狂牛病が人に移った可能性を認めました(正確には「否定できない」とした)。現在、イギリスでは107名の非定型クロイツフェルトヤコブ病患者が発見されています。そしてオックスフォード大学のニール=フェルグソンは非定型クロイツフェルトヤコブ病患者は最大で13万人以上にのぼる可能性を示唆しています。
明日はイギリス以外の動きを見てみます。
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