2001/10/17
炭疽菌の話1
炭疽菌(学名Bacillus Anthracis)によるテロらしきものが話題になっています。そのわりには炭疽菌について詳しく知っている人はあまりおらず、感染についても知られていないようです。正しい知識を身につけることは炭疽(炭疽菌によって発病する病気の総称)に対する防衛にもなりますので、ここで書きます。
まずは例によって起源からですが、炭疽菌を発見したのはその道では非常に有名なコッホです。この人は感染症の病原体を同定するための原則を定めた人で、これはコッホの三原則と呼ばれています。簡単に言うと、「病巣から菌を分離し純粋培養する」「培養した菌を健康な動物に摂取する」「同じ症状が出たらその動物の病巣から菌を分離し純粋培養し、初めの菌と同じか調べる」というものです。コッホはこの三原則を満たすための培養に成功しましたが、それが炭疽菌だったのです(その後コッホは結核菌の培養にも成功している)。これは1876年のことです。そして、これまた有名なパスツールが初めて生ワクチンを作ったのもこの炭疽菌です。炭疽菌は好気性グラム陽性大桿菌の一種で世界中のどこにでも存在し、特に南米、アフリカ、アジアに多いと言われています。発生手順ですが、まず炭疽菌に感染して死亡した動物によって土壌が炭疽菌に汚染されます。このような炭疽菌に汚染された地帯を炭疽地帯と呼ぶのですが、特に「あの」パキスタン付近は炭疽ベルトと呼ばれる危険地帯です。汚染された土壌の中で炭疽菌は芽胞という形態になります。これは物凄く頑丈な状態で、熱、化学物質、酸、アルカリ、紫外線などに抵抗できる形態です。この状態であれば炭疽菌はまったく栄養がない状態でも数十年以上も生き続けることができます。とはいえ、本来は地中深く眠っているのですが、干ばつや洪水、長雨などの異常気象が発生すると土中から土表面に現れ、増殖します。そして動物が飲み水や牧草などと共に経口摂取し、発病するという状況になります。
明日に続きます。


 

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