2001/10/16
クジラの体温調整の話
水生哺乳類といえば長年疑問だったのがどうやって温度差を吸収しているかです。もちろん一般的な知識として皮下脂肪が熱を遮断して、というのは知っていますが、放熱する場合はどうするのか等、不明な点が多かったのです。色々と調べた結果、クジラに関してはわかりましたので、とりあえずクジラについて書きます。
調べたところ、クジラは熱の放出器官を持っていないようです。正確に言うならヒレからは多少熱の放出を行うことができますが、その量は極微量で、とてもクジラ全体の熱交換を任せられるほどではありません。また水中では汗が気化熱を奪うことができないため意味が無いので当たり前なのですが、汗腺もありません。よって、熱を放出するメカニズムはほとんど用意されていないのです。とはいえ暑いときもあるでしょうから多少は存在しています。クジラは厚い皮下脂肪層に存在する血管を自由に開け閉めすることができます。その血管を開くと、いわゆる毛細血管に血液が大量に流れ込みます。これは体表近くまで来ていますから、直接水に触れることで血液を冷ますことができます。ようは酒を飲んで赤くなる状態を人工的に作るわけです。寒いときはこの皮下脂肪下の血管を収縮させることで血液の循環を末端に行わないようにし、脂肪で熱を遮断するという方法をとります。またクジラはその血管の配置にも工夫があり、静脈が動脈を取り巻くような形で配置されています。これによって動脈と静脈の間で熱交換が行われ、高いエネルギー効率を保つことができるのです。さらにクジラはその筋肉の中に大量の酸素を溜めることができます。これは筋肉にミオグロビンが大量に含まれているためなのですが、これが熱の遮断効果を持つらしいこともわかってきました。こうしてクジラは暑さや寒さに対処しているのです。
ちなみにこのミオグロビン量はマッコウクジラが哺乳類最大で、そのため時間にして一時間、深さにして水深1000メートル近くまで潜ることができます。ついでに書くと、交尾にも一時間くらいかかるらしいです・・・。
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