2001/06/02
寄りかかられ道の話1
寄りかかられ道と聞いてもなんのことかわからないでしょう。わかる人がいたらむしろ異常です。これは私が勝手に作った道ですから。寄りかかられ道とは電車の中でいかに寄りかかられるかを極める道なのです。
寄りかかられ道というものを作ったのは大学の頃でした。当時、私は大学に通うのに片道で二時間ほどかけており、そのうちの1.5時間程度は同じ電車に乗っておりました。そして、私が電車に乗り座っている(始発駅から乗るので確実に座れました)と、何故か隣で寝ている知らない人が、反対側にも人がいるのにわざわざ私のほうに寄りかかってきたものです。電車の中で他人に寄りかかられるというのは、やられたことのある人ならわかりますが、あまり気持ちの良いものではありません。私ももちろん、寄りかかられることは決して気持ちの良いものだとは感じませんでしたし、むしろ嫌でした。が、嫌だなぁと思いつつも相手はきっと疲れているのだから、と寄りかからせておりました。ところが、ある日のことです。れいによって隣に座ったおばさんが私に寄りかかって寝ました。そのおばさんは私が降りる駅の二つ手前の駅で目覚めて降りたのですが、ふと自分のワイシャツを見ると、そこに口紅がべっとりとついているではありませんか。経験のある人ならわかると思いますが、シャツについた口紅というのはこれがなかなか落ちないのです。私は基本的にその語源どおりワイシャツは白地のものを着ますから、口紅の跡の目立つことといったらありません。同級生にからかわれる日を一日過ごし、帰りの電車の中で再びサラリーマンに寄りかかれた瞬間、私の中の何かが壊れるのがはっきりとわかりました。もう我慢できません。ただ寄りかかられてなるものですか。寄りかかるという行為は寄りかかられる側にとっては迷惑行為なのですから、それなりのリスクを負ってもらわなければなりません。こうして寄りかかられ道というものが誕生しました。
明日に続きます。
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