2001/03/17
机上戦略論(補習)1
以前の机上戦略論で書かなかった、ある重大なことを説明するために、日本の二つの戦を比較したいと思います。別にこれは前回故意に抜かしていたわけではなく、一部の架空戦記物でも重要視されているために書かなかっただけです。しかし、さすがに机上とはいえ、戦略論を語る上でこれを逃してしまうのはあまりに片手落ちと感じますので今回取り上げることにしました。その二つの戦いとは、桶狭間の戦いと厳島の戦いです。
桶狭間の戦いというのはあまりに有名なので説明するまでもないでしょうが、織田が今川二万五千の兵をたった三千の兵で奇襲して破った戦ということになっています。対して厳島の戦いというのはこれも国営放送のドラマのおかげで有名になりましたが、二万の敵に対して四千の兵で倒したという戦いで、これまた奇襲戦の見本とされています。この戦をもう少し説明すると、まず厳島という小さな島に毛利が城を築き、この城を攻められたらまずい、ということを内外に喧伝。それを聞いた陶が厳島に全軍上陸したところを攻撃して撃滅したという戦です。この二つの戦の異なる点はまずは能動的であったか受動的であったかという違いが挙げられます。毛利は自ら戦略を駆使して勝てる環境を設定し勝利したのに対して、織田は自らは戦略を駆使せず、相手の戦略の上で勝てるタイミングを狙って勝利した点が異なります。それ以外では多勢を無勢で破った、どちらも奇襲攻撃であった、悪天候の隙をついたなど、非常に似通っています。しかし、この二つはたしかに奇襲戦なのですが、どちらも漠然と奇襲攻撃をしたわけではなく奇襲戦に成功するための前段階で、アプローチは逆であってもまったく同じ高度な戦略が存在していました。それが今回のテーマ。この二つは実は「情報戦」でもあるのです。蛇足ですが、この二つは日本の「戦国三大奇襲戦(もう一つは河越夜戦)」に挙げられており、私が勝手に似ていると言っているわけではありません。
明日に続きます。


 

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