2001/03/16
戦術と戦略の話
よく言われる言葉ですが「戦術的勝利をいくら集めても戦略的勝利にはなりえない」という言葉があります。これは本当でしょうか。私自身、机上戦略論(導入編)の中で似たようなことを述べているように見えますが、実は違います。これには大きな詭弁が存在しているのです。
戦術と戦略の違いに関しては机上戦略論(導入編)を参考にしてもらうとして、戦術的勝利の集合は本当に戦略的勝利にならないのでしょうか。違います。これは手段と目的がごちゃごちゃになっているために発生する台詞なのです。そもそも戦略というのは何のために組み立てられるのでしょう。それは戦術的な勝利を得るために他なりません。逆の見方をするなら、戦術的な勝利は戦略的な勝利のための手段なのです。戦争は基本的には陣取りゲームです。相手の陣地を多数奪えばその分、相手の逃げ場が狭まり、逃げ切れなくなったほうが負けとなります。将棋やチェスを考えてみればわかるでしょう。ということはより多くの場所で戦術的な勝利を得ればそれは最終的な戦略的勝利をもたらす可能性が高くなるのです。しかし、より多くの場所で戦術的勝利を得るためには戦略が必要です。鶏が先か卵が先か、のような話になっていますが、戦略は戦術的勝利を得るためのもの、戦術は戦略的勝利に必要なものと考えればわかりやすいでしょう。よって「戦術的な勝利をいくら集めても戦略的な勝利にはなりえない」のではなく、「戦術的な勝利を集めて戦略的な勝利を得るためには戦略が必要」なのです。では、戦術と戦略ではどちらが大事なのでしょうか。
答えはどちらも大事としか言いようがありません。例えば優れた戦略を持っていてもそれを実現できるだけの戦術がなければ意味がありませんし、逆に優れた戦術を持っていても戦略がまずければ最終的には敗北します。明らかな戦術的失敗が戦略的な敗北を招くこともありますし、戦術的な勝利が戦略的な勝利を呼び込むこともあります。もちろん、戦術的な敗北は戦略がまずかったからという見方もありますが、それは結果論でしょう。


 

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