2000/11/12
AT互換の話
いわゆるAT互換という言い方が事実に即さなくなってきました。
AT互換という言い方はIBMのパソコンPC/ATに発します。この1984年に発売されたパソコンは画期的な商品でした。PC/ATはパーソナルコンピュータアドバンステクノロジの略です。その前のパソコンがPC/XTですが、これはエクテンデッドテクノロジの略と言われています。とはいえ、そのときの規格で現在も残っているものはたった一つしかありませんし、それすらなくなりつつあります。まず、CPUは286です。もちろんソケット3ですらありません。メモリは直載。SIMMですらありません。電源はAT電源。もはやATX電源に取って代わられました。キーボードはAT規格。後にPS/2というパソコンが出て、そちらで使われていたコネクタが今は使用されていますし、それすらUSBに取って代わられつつあります。フロッピーは5型。画面もEGAで、VGAですらありませんからこれまた現存しません(VGAもPS/2から)。しかもEGAはその前のPC/XTと同じ規格です。そういうわけでもはや残っている規格はありません。いや、最初に一つだけ残っていると書きました。PC/XTに存在せずPC/ATになってついたその規格とは、オープンアーキテクチャの基礎、ISAバスなのです。これはBIOS以外の全ての仕様を公開し、ビデオカードやその他のカードを他社任せにするという画期的な手法で、ユーザが自分の好みに合わせて好きなパーツを使用できるという汎用性の高いシステムです。このオープンアーキテクチャがあったからこそAT互換機の今日が存在しているといっても過言ではありません。しかし、最近のマザーボードに搭載されているのはPCIだけで最後の砦であるISAバスすら残っていません。もはやATの名を残すものは何一つ存在しないのです。
そういうわけでAT互換に変わる新しい言い方を考えなければならなくなりました。そういえば最近さすがに聞かなくなりましたDOS/Vパソコン。これってとっても変な言い方です。動くOSの名前をもって種類としているのですから。では昔の日本電気のパソコンはMS-DOSパソコンでしょうか。でも、もはやこの言い方を踏襲するしかないようです。Windowsパソコンって。
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