2000/10/15
やぶ医者の話
腕の悪い医者のことを「やぶ医者」と言います。私はこれは藪医者でその心は「入ったら無傷じゃいられない」。こういう表現は江戸っ子特有の洒落で、例えば「大したもんだ」というのを「イナゴのしょんべん(「田へした」から)」とか、調べると色々あります。ところが、このやぶ医者はそういう洒落じゃなさそうです。なんでこんな言い方をするのでしょう。前々から疑問に思ってはいたのですが特に調べもしませんでした。
やぶ医者と言えば薮井竹庵先生です。この先生はその名に非ず?鉄屑が目の中に入ったという鍛冶屋に磁石を練り込んだ軟膏を貼り付けて治しちゃうような人です。この人が語源なのかな、とも思われます。ところが、今日たまたま辞典を読んでいたら、なんと「やぶ」という項目が「薮」以外にあるじゃないですか。ここからは私の想像ですが、やぶ医者は元々は「野巫医者」と書いたのではないでしょうか。野巫というのは本来は田舎の巫医(祈祷師とか医者)の意味で、怪しげな祈祷師を指す言葉です。江戸時代の医者は御札を高い値段で売りつけたりするようないい加減な医者が多く、そういう詐欺まがいの医者のことを野巫医者と言うようになったのではないでしょうか。また、野巫とは一術しか身につけていない者を言い、修行の浅い禅者のことを指すこともあるようです。ようはどんな病気でもこの御札があればたちどころに治る、みたいな、そういう連中のことなんですね。たしかにやぶ医者はその病状に関係なくなんでもかんでもすぐ血採ったり、レントゲン撮ったりと一つのことしかしないものです。まさしくやぶ医者の語源そのままですね。
ついでにやぶ医者以外の下手糞な医者の言い方というのを調べてみました。色々ありますね。どれもこれも洒落ていて、江戸っ子の面目躍如という感じです。ざっと紹介しましょう。まずは紐医者。これはものが紐だけに引っかかったら確実に死ぬそうです。竹の子医者。これはまだやぶ(薮)にもなっていないという意味です。
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