2000/10/03
遺伝的アルゴリズムの話2
遺伝的アルゴリズムの説明の続きです。何故遺伝的アルゴリズムはメジャーにならないのか。それはこのアルゴリズムがあまりに問題点を多く抱えすぎているからです。
一番最初の問題は、何を遺伝子の要素とするかです。ここで要素の設定をミスると全てが台無しになるため慎重に検討する必要がありますが、このときの設定は最終的には設計者の感性に任されます。次に評価の問題です。どのような遺伝子を優秀とみなすかを決めるのもやはり設計者の感性となります。さらに交差の問題です。前回あげた電柱の問題で交差を考えてみましょう。基本的にあの場合では遺伝子は10個、どの順に回るかを列挙するというのが一番簡潔です。しかし、遺伝子の交差をしようとした段階で困ると思います。例えば0123456789の順で巡回する遺伝子と2534617890の順で巡回する遺伝子とではどう交差すればいいのでしょうか。同じ数字がダブるわけにはいきませんし。これに関しては色々な研究が今もってされています。さらに突然変異にも問題があります。あまりに突然変異する率を高くしすぎるとこれはもはやランダム検索と同じになってしまいますし、逆に低すぎると正しい解が求められなくなります。これもまた設計者が感性で決めます。これ以外にも初めに用意する遺伝子の数から、次のサイクルに残す遺伝子の数(切り捨てられる遺伝子の数)など、全てが設計者の感性で求められます。ここまで設計者の感性というか感覚というか、に頼るアルゴリズムも珍しいですし、これらの設定に絶対的な法則や解はありません。しかもほんの少し設定を変えただけでも結果ががらっと変わってしまうのです。
結局、商業的に実用に達した遺伝的アルゴリズムというのはほとんどなく、あくまで研究レベルに留まっています(実は遺伝的アルゴリズムを使用できるような問題を探しているという現実があります。まさしく手段のために目的を選ばない状態)。しかし上で述べた感性の部分の解自体をニューラルネットワークで求めるという研究もありますし、逆に商用転用されていない分だけ、可能性というか未来が広がっている部門でもあります。頑張れ遺伝的アルゴリズム。


 

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