2000/07/12
特許の話3
昨日の続きです。拒絶理由通知をもらったとき、反論することもできますが、拒絶理由に関しては納得したので、内容を補正することで特許として認めてもらおうというときもあります。このときに提出するのが手続補正書です。
この手続補正書では最初に特許出願した範囲を上回るような修正は、行えません。新しい具体例や、新しい効果などを追加することは決して許されないのです。何故なら手続補正書の目的が拒絶理由に対する納得が前提となっているからです。これは特許の拡大解釈を防ぐためでもあります。これだけだと何がよくてなにが悪いのかわからないでしょうから、具体的な説明をしますと、例えば出願時に「紙」と書いていたのですが、よく考えれば「布」でもよかった。「ナイロン」でも大丈夫だ、ということに気づいても最初に出願したときに「紙」としか書いていないならもはや決して「布」や「ナイロン」を追加することはできないのです。出願時に「繊維」と書かれていれば範囲を広く取れたのですが、後から「繊維」と書くことはできません。逆に「繊維」と書いてあれば後から「繊維」を「紙」と特定することはできます。つまり、手続補正書を用いた場合、特許は最初に申請した状態から範囲をさばめることはできても、拡大することは不可能なのです。この意見書と手続補正書を何度か出して、再審査を通ってもまだ切りぬけなければならない関門があります。それが特許査定です。この特許査定まで到達した時点初めて特許料納付となるのですが、ここで第三者が異議申立てを行うことができるのです。これをクリアして特許が登録されます。特許が登録されてもまだまだ無効審判請求というものが現れることもあります。
こうして初めて特許権が発生します。まとめてみると、どのような経緯を辿ったとしても初めに申請した特許出願の範囲を上回って特許が認められたり、特許期間が長くなったりすることは絶対にないということになります。おわかりいただけたでしょうか。さて、次回は何故特許を取得するのか、という根本に迫りたいと思います。


 

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