2000/06/08
医学会の話
学会と聞くと、常に最新の発表ががんがんなされているぴりぴりした印象をもたれるのではないでしょうか。特に医学会はそういう印象がありますよね。でも、本当のところはどうでしょうか。
何故そのようなことになっているのかを説明する前に、専門医というものを説明しましょう。医学は学ぶことがあまりに量が増え、広く浅く学習しても使い物にならない状態になっています。本来なら広く深く知る必要があるのですが、人間の脳にも限界がありますからそういうわけにはいかず、内科や外科など、ある科に特化するのが普通になりました。ところが、それすら最新の医学では増えすぎた知識についていけず、ある特定の病気に特化した医者が必要になったのです。そのためにできたのが専門医制度で、例えば喘息みたいにある特定の病気に特化した医者を専門医として認定するという制度なのです。もちろん専門医の資格を取るのには条件があり、それは何の専門によるかによって異なるのですが、その病気に精通していることは当然として、それ以外にとんでもない条件が課せられている場合があります。例えば三年に一回論文を発表しなければならないみたいな。では、三年で何か新しい発見ができればいいのですが、何も発見できなかった場合、専門医資格を取り消されないためにはどうするかわかりますか。ある発表に対して、自分の名前を協力者として入れてもらうという名前貸しはまだいいほうです。それができない場合、どうしょうもない学会発表を行うのです。それは以前の発表の焼き増しだったり、まだ発表できる段階ではない仮説だったり、誰かの発表のパクリだったりします。そんな発表の率が増えるため、学会の全体的な質は急激に低下し、本当に良い発表がかすんでしまうのです。
下手にこの条件を解除すると、一度資格を取ったあとはまったく勉強をしなくなり、10年前の知識しか持たない専門医が出てくるでしょうから、この構造的な欠陥を解消する方法は今のところありません。医学に正解はありませんから試験を課すわけにもいかず、こうして医学会は今日も酷いまま始まり、終わるのです。


 

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