2002/06/08
醤油とわさびの嘘の話1
テーブルトークは、常識とか当たり前だと思っていることに対して、それが本当かどうかという懐疑の目を向けることからスタートします。今日もまた、そんな「常識」に対する懐疑からスタートした真実を拾い上げてみたいと思います。
わさびと醤油、刺身の関係は、某グルメ漫画による啓蒙活動や静岡産わさびのCMなどの影響で、正しい作法を知っているという人が多いと思います。わさびは決して醤油に溶かしてはいけない、むしろ刺身の上に乗せて醤油に浸けるときも触れないようにして食べるというのが正しい、というやつです。何故そのようなことをするのでしょうか。ものの本によるとわさびの揮発成分が醤油に溶け出すことで辛味を失うからだとあります。しかし、実際にわさびを醤油に溶かしたら辛くなくなったという経験をした人がいるでしょうか?そもそも、わさびの辛味成分に関してどこまで知っているというのでしょう?わさびの辛味成分はシニグリン配糖体という物質です。この物質自体は辛くありません。が、わさびを摩り下ろすとわさび内のミロシナーゼという物質(からし油配糖体加水分解酵素というらしい)によって加水分解され、アリルからし油(アリルイソチアシアネートまたはイソチオシアン酸アリル)に変化することによって辛味となります。そのため、わさびは摩り下ろしさえしなければ、かなりの期間保存することができるのです。さて、このアリルからし油ですが、実はホースラディッシュ(西洋わさび)やいわゆるカラシと化学的成分は、まったく同じです。本当に同じなんですよ。ということは、わさびを醤油に浸けるのがまずいならカラシも駄目ということになりますが、からしを醤油に溶かすななどと言う人を見たことがありません。そもそも某グルメ漫画ですら、大根おろしに醤油を浸けています。大根おろしの辛味成分も実はアリルからし油なのにも関わらず、そのことには一切触れず、平然と醤油に浸しています。これは一体何故でしょう?
続きます。


 

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