2002/03/12
放送禁止用語の話
よく使われている放送禁止用語という言葉ですが、調べてみると、それに関係するような法令は存在しませんでした。
そういうわけで、色々と文献を当たってみたのですが、公式な文書として放送禁止用語について書かれた書類は、ありませんでした。ただし、「放送禁止用語」という言葉は出てきませんが、それに近いことの書かれた文書は存在しています。それは日本民間放送連盟が定めた「放送基準」という文書です。この中に、「放送禁止用語」のことを指していると思われる項目が、ばらばらになって、しかもかなり抽象的な表現として存在しています。例えば八章には「表現上の配慮」という題がついていますが、「方言を使う時は、その方言を日常使っている人々に不快な感じを与えないように注意する」だの「不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現は避ける」だのといった表現がありますし、十一章の「性表現」も「全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現する時は、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する」だの「出演者の言葉・動作・舞踊・姿勢・衣装・色彩・位置などによって、卑わいな感じを与えないように注意する」だのといった項目が存在してます。しかし、これらをよくよく読んでみると、あくまで「注意」したり「避け」たりするように促す表現です。つまり、どこにも「禁止」という言葉は使われていませんし、「ならない」みたいな強い否定表現もないのです。結局「放送禁止用語」という言葉は、民放局が独自に作成した一覧に過ぎない、ということになります(実際、局によってはこれを放送自粛コードと呼んでいるところもある)。ではNHKはどうでしょうか。NHKの場合もやはり「放送不適当用語」という自主規制を作成し、それを使わないようにしているようです。
出版関係ではどうでしょうか。実は「記者ハンドブック」という虎の巻があります。その中には「基本的人権を守り、あらゆる社会的差別をなくすため努力することは、報道に携わる者の重要な責務」という文章とそれに続く差別用語集があります。しかし、その基準については書かれていなかったりします。


 

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