2002/05/09
口蹄疫の話1
豚から口蹄疫が見つかったという騒ぎで、狂牛病と同じように感染するのではないかと心配する人がいたので、つい「君にひづめがあるならね」と言ってしまいました。我ながらいくらなんでも不親切な回答でしたので、どうせここを見ているだろうということで、テーブルトークで口蹄疫について述べたいと思います。
まずはいつものように口蹄疫の歴史についてざっくりと説明しましょう。以前にテーブルトークで書いたかも知れませんが、世界で初めて動物からの分離に成功したウィルスが、この口蹄疫です(1898年ドイツのフロッシュとレフラーによる)。口蹄疫自体は、一体いつからあったのかは、はっきりとはわかりません。紀元前からあったとする説もあるくらいです。明らかに口蹄疫だろうと思われる記述が最初になされたのは、イタリアのフラカストロによるもので、これは1546年のことです。しかし、それからしばらくは口蹄疫よりも激しい伝染病が流行したこともあって、口蹄疫に関する記述は見つからなくなります。その後わかっている限りでは、アルゼンチンから来た口蹄疫が1839年にイギリスで大流行しています。そして、現在に至るまで、口蹄疫は有効な予防策が無い(ワクチンは存在するが後述する理由により使用されていない)まま、その猛威を奮っています。口蹄疫の症状は非常にわかりやすく、40度前後の発熱があり、よだれが増大し、口(唇や歯茎、舌)、鼻、蹄に水泡ができ、それが潰れて潰瘍になります。致死率は低く、成獣が死ぬことは希ですが、潰瘍が痛いために歩くことや食べることもできなくなります。感染は接触やウィルスの付着した飼料、くしゃみやよだれなどから感染します。ウィルスが風で運ばれる空気伝播も発生します。潜伏期間は動物によって異なり、平均で牛が一週間、豚が10日、羊が9日程度です。この中でも特にやばいのは潜伏期間の長い、豚です。感染した豚は牛のおよそ1000倍のウィルスを周りにばらまくからです。
続きます。
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