2000/12/15
猫とイカとタマネギとの話
猫を飼っている人なら猫にイカを食べさせると腰を抜かす、なんて話を聞いたことがあるでしょう。さすがに実際にやった人はいないと思いますが。それからタマネギを食べさせると死ぬなんて話もありますよね。
その科学的根拠について調べた人は、そうはいないと思いますので私が書きます。もちろんあれらの話は迷信ではなく、きちんとした根拠が存在しています。まず、猫にイカを食べさせると腰を抜かすという話ですが、これはチアミナーゼのせいだと思われます。イカやタコにはチアミナーゼという酵素があり、これを多量に摂取するとビタミンB1を破壊します。ビタミンB1というのはブドウ糖の体内利用に必要なビタミンです。またブドウ糖は即効的な疲労回復効果がありますので、これが欠乏すると疲労感や倦怠感を覚えたりします。猫にチアミナーゼを取らせるとB1欠乏、つまり脚気のような状態に陥り、歩行不能になることもあります。これが腰を抜かす、の根拠です。でもチアミナーゼは熱に弱い性質がありますので、実は焼いてしまえばOK。ただしイカタコ類は消化に悪いですし、干したものは水分を吸うと急激に膨らむため、嘔吐の原因になったりしますから注意。つまり、鉄板焼き用の生イカを買ってきてよく焼いて与えれば猫が腰を抜かすことはありません。そうまでして食べさせるものではないと思いますが。これより危険なのはたまねぎです。たまねぎにはアリルプロピルジスフィドという物質が含まれており、これは血中ヘモグロビンに作用して溶血を起こします。よって、猫が食べ過ぎれば死にまで至ります。こちらは熱を通そうがそうやたらには分解されませんから大変なことになります。極端な例ですが、すき焼きの残り汁でたまねぎ中毒になることすらあるそうです。
ちなみにチアミナーゼに関してはもちろん人間でも多量に取るとB1欠乏になります。そういえば、どっかのなんちゃら辞典というテレビ番組ではイカタコがコレステロール低下作用があるので取れ取れなんてあおっていましたが、これだけでもあの番組がいかに嘘に満ち満ちているかわかりますね。
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