2000/03/15
その道の伝説の話
さて、その道での伝説の話を2つあげます。恐ろしいことにどちらも実話だったりします。
ある同人作家がS社のファンタジー系の賞に入選してプロデビューを果たしたんです。そうしたら、今まで書いていた同人誌を全部おっぽったんですね。同人で書けるか!って。その編集さんに泣きつかれて最終回をゴーストしました。
その作家の過去の文章を読んだのですがあまりにつたなく、酷いものだったので私は苦しみながら一生懸命真似たんです。できあがったのは私が今までに書いたことがないというくらい酷い文章でした。まあ、その作家の文としてはこんなもんかな、いや、もっと酷くしないとばれます、なんて編集の人と話をしたりして。そして、その同人誌が出て、ファンレターが来たので編集さんが持ってきてくれました。二人で封を切ったら「先生、プロデビューしたら文章がうまくなりましたね」。あの時は腹を抱えて笑いました。ちなみにその作家はもう消えてしまいましたね。
もう1つの話は超伝記バイオレンス物の巨匠、K先生の文章を真似してくれ、と言われてショートを書きました。その編集さん、よせばいいのに即売会でそれを「実はK先生が別ペンネームで寄稿してくれたものだ」なんて言って売ってたらしいんです。そうしたらサングラスのおっさんが来てぱらぱらと読んで
「ああ、本当に俺の文だ。でも俺は書いてないぞ」。
K先生だったんですね。編集さんは平謝りだったんだそうですが、「下手糞な文章だったらぶん殴ってやろうと思ったけれどこんだけ似てるなら俺が書いたって言ってもいいよ」、と言われたたそうです。最後までサングラス外さなかったそうですし、サインは勘弁と言われたため、本当に本人だったのか不明なのですが、それ以来、私はK先生のファンになりました。
今はこういう粋な真似をする先生もいなくて、すぐに著作権違反で訴える、とか言われたりするみたいです。気持ちはわかりますが、同人誌にむきにならなくてもいいんじゃないかな、と思います。
もちろん、訴えるべきものもあると思います。作品のイメージを変えるようなものは訴えるのも仕方ないでしょう。作者の世界観を踏みにじる行為ですし、いくらキャラクターに思い入れがあるからっていいわけしても、そのキャラクターを産んだ作者に対する敬意というものが払われていないのは明らかですから。
でも、なんでもかんでも訴えるってのはちょっと悲しいですね。


 

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